最早これは復讐などではなく、自分たちの幸せの為の前儀である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 朝日がリビングを仄かに照らす中、珍しく二人分の食器が鳴る音が響いていた。

 「キラ。今日、念の為に医者に行こう」

 そう切り出したのは、朝食を食べ終えてコーヒーを楽しむイザークであった。

 その珍妙な状況に、今一納得しきれない体のキラは、でも・・・と言葉を濁した。

 「先程も申しましたように、私はもう大丈夫です。ご心配には・・・」

 些か不安げに零された言葉は、意図も簡単にイザークによって遮られる。

 「念には念を入れておいた方がいいだろう。安心しろ、俺もついて行く」

 そう言って、今の今まで外していた視線をピタリとキラのそれに合わせた。

 一体、どういう心境の変化であろう。

 結婚してから今まで、共に朝食をとることは滅多になかったし、特にここ一年ほどは一度だってなかった。

 もしやキラの体調を慮ってか。

 確かに彼は優しい面も持っている。だが、どうしても腑に落ちないのだ。

 「いいえ、イザークは仕事に行って下さい。私一人で行けますから」

 急な態度の変化に、キラは嫌な予感がしてならない。

 だがその一方で、彼の好意を素直に受け入れられない疑り深い自分が、何よりも許せなかった。

 こんなにも疑り深くなってしまったのは、恐らくあの事件の所為であろう。

 「構わん、気にするな。俺が勝手について行くだけだ」

 尚も引く様子を見せない彼に、キラは頷きざるを得なかった。

 「わかり、ました・・・。では、仕度をしてきます」

 流石に熱を出した次の日に食欲はあまり湧かず、元より軽めの朝食をキラは一口ほどしか食べられていなかった。

 もしかしたらイザークは、これを見て言ったのかもしれないと思い、キラは小さく微笑を零した。

 やはり彼は優しい。こんなに醜い自分にも、こんなに優しく接してくれるのだから。

 「無理はするなよ。辛かったら、メイドに手伝わせろ」

 そう言いながら自らも席を立ち、キラの肩に手をやり彼女を支えながら歩きだした。歩調も勿論、彼女に合わせて。

 今まででは考えられないようなことを突然し出す彼に目を見開くも、キラは溢れる嬉しさに破顔した。

 キラは知らない。彼女のその表情を見て、イザークがほくそ笑んでいたのを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お待ち下さいな」

 身支度を整え、今まさに出かけようとしていた所を、アスランは後方から聞こえる声によって引き留められた。

 「・・・何か?」

 不機嫌さを露にしつつも律儀に答えるアスランに、声を掛けたラクスは小さく笑った。

 「いいえ。ただ今日、父の病院にお友達が来るようなので、お知らせしておこうと思いまして」

 予想外のその言葉に、アスランは眉間に皺を寄せた。

 「『お友達』?あなたの友人など、俺には関係な・・・」

 「それはどうでしょう?」

 アスランの言葉を遮り紡がれた言葉に、彼は小さく彼女を睨んだ。

 「・・・どういう、意味だ?」

 その問いに、ラクスは答えない。ただ、笑んでいるだけだ。

 それが癪に障ったのか、アスランは小さく舌打ちして玄関を出た。

 「何なんだ、あの女・・・・・っ」

 表情からも声音からもその物腰からさえも、一切何も読ませない彼女に苛立ちが募る。

 ラクスが何を考えているのかが分からず、無性に苛立ちが募る。

 こんな時、彼女が傍にいてくれれば、きっと彼女しか考えられなくなるだろうに。

 ふと脳裏に浮かんだ女性に、アスランはそっと目を細めた。

 だがそれも束の間、先程のラクスの言葉がアスランの脳裏に甦った。

 「まさか・・・」

 そう言うや否や、アスランは急いで車の元に向かい走り出した。それと同時に懐から携帯を取り出し、ディスプレイを

見ずにそれを操作した。

 聞こえだしたコール音を確認し、すぐさまそれを耳に当てる。

 間もなくして音が途切れ、次いで物腰の柔らかそうな男性の声が聞こえた。

 「ニコルか。病院に用がある。少し遅れるが、そちらは大丈夫か?」

 病院、と言われれば彼の親友でもあるニコルにはどこの病院か容易にわかる。

 『問題はありません。ですが、あまり長居はしないでくださいね。こっちは一週間後の会議の準備で忙しいんですから』

 多少催促もあるが、アスランは苦笑を浮かべるに留める。

 「わかっている。すまない」

 相手の返事も聞かずに通話を切り、アスランは車に乗る。

 キーをさしてそれを回し、エンジンをかける。

 「キラを・・・・・」

 自分の考えが外れていればいいと、アスランは強くハンドルを握りしめた。

 「・・・キラを傷つけていいのは、俺だけだ」

 その独占欲が彼女を苦しめるとわかっていても尚、思いは募る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 またぶり返してきただるさに身体をふらつかせながらも漸く着替え終わったキラは、自室を出てイザークの待つであろ

うリビングに向かった。

 途中階段を踏み外しそうになったが、なんとか堪えて目的の部屋に辿り着いた。

 そっと扉を押し開けると、ずっと待っていたのだろうか、イザークが遅かったなと声をかけてきた。

 「ごめんなさい、ちょっと仕度に手間取ってしまって・・・」

 苦笑を浮かべてそう言うと、イザークは僅かに眉根を寄せつつキラに近づいてきた。

 条件反射的に一歩後ろに下がろうとするが、あろうことかタイミング悪く身体が揺らいだ。

 「っう・・・」

 小さく吐かれた声音は、次の瞬間には息を呑むものに変わる。

 何故なら、傾いだ身体を他の誰でもない、イザークが支えているのだから。

 「だから言っただろう、無理はするなと」

 そっと彼の表情を覗き込んでも、心配げなアイスブルーがあるだけで、キラはどうしていいかわからなくなった。

 「ほら、さっさと行くぞ」

 そんなキラの不安に気付いたのか否か、イザークは軽々とキラを横抱きに持ち上げて歩きだした。

 「えっちょっ!?」

 昨日に引き続き驚きを露にするキラを一瞥し、途中で車までだから我慢しろと呟いた。

 「安心しろ。落しはしない」

 そんなことを心配しているのではないが、しかしキラはまたとない幸せを噛みしめるのであった。

 何度、夢見ただろう。

 彼が自分を見て、気にかけてくれるなんて。

 これが夢なら、褪めなければいいのに。

 「・・・・・・・・・・」

 どうか、夢ではないようにと。

 キラは切に、願い祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

全員悪役にする気満々なのに、仕切れないあたり、甘くてすみません。












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