頬の火照りも冷めやらぬまま、玄関に辿り着いてしまった。 幸い今は夕暮れ時なので、多少顔が赤くともじっくりと見ない限りはばれないだろう。 そこまで考えて、僕はハッとする。 「別に、バレたっていいじゃん・・・」 最近、やはり自分はどこかおかしい。 なんというか、自分の考えることが、自分自身よくわからないのだ。 まさか、これはアスランの影響だろうか。 「・・・・・まさか、ね」 そんなはず、ないではないか。 何にでも無関心と有名な自分が、たかが男一人でおかしくなるわけがないのだ。 そう自己完結して、下駄箱の靴を手に取ろうとした時だった。 「ヤマトさん、だよね?」 廊下の方から聞こえてきた男の声に、面倒だなと思いつつも振り返った。 「・・・はい、そうですが、なにか?」 いかにも気だるげに答えながら、相手を見据える。 そこに立っていたのは、確か評議会議員のジェレミー・マクスウェル氏の息子、ラスティ・マッケンジーだった。 父親と姓が違うのは、両親が離婚したからだと、以前母カリダに聞いたことがある。 確か彼は、同級生だったはずだ。 「ちょっと、話があるから来てくれないかな?」 その意味ありげな態度に、僕は思わず隠しもせずに顔を顰めた。 「話ならここですればいいじゃない。それとも、ここでは話難い内容なの?」 何故か苛々している自分に内心で首を傾げながらも、僕はラスティを睨み据えた。 しかし当のラスティは、飄々と笑みを浮かべるばかりで、応える気配はない。 それに益々怒りを顕わにすると、ラスティは何故だか可笑しそうに笑いながら言葉を紡いだ。 「まあね。君と“お話”がしたいって奴らがいるんだ」 “奴ら”ということは、複数いるらしい。 肩を竦めながら言う彼に、僕は完全に目を据わらせた。 「なら、その人たちに、『用があるならこっちに来い』って言っておいてくれない?」 僕、それほど暇人じゃないから、と続け、僕はラスティに背を向けた。 そして足を動かす前か後か、僕の腕は簡単に、捕らえられた。 [ 校庭の方から、部活に勤しむ生徒たちの声がちらほらと聞こえる。 そんな中、僕は前方のオレンジ頭の男子生徒、基ラスティ・マッケンジーに腕をグイグイ引っ張られながら廊下を進んでいた。 「ちょっ!?離して!!」 あまりに強く引っ張るので、跡が残ってしまうと危惧して叫ぶ。 だがラスティはどこ吹く風で、真っ直ぐ前を向いたまま淡々と足を進めるだけだった。 「っもう!!なんなんだよ・・・」 思わず、小声でもそう悪態を吐いてしまうのも、無理はないだろう。 このまま前を向いているのも癪なのでそっぽを向いていると、間抜けにもラスティが止まったことに気付かず、そのまま彼の 背中に突っ込んでしまった。 「ぶっ!?」 そんな僕を呆れてるんだか笑ってるんだかよくわからない表情で見下ろしてくる彼を、僕はまた睨みつけた。 「ここだよ」 苦笑交じりにそう言うと、ラスティは扉をガラガラと開けた。 「・・・てかここ、図書室じゃん!?」 そう。目の前の教室は、紛うことなく図書室だ。 図書室は普通、本を読む場所だ。 話をするなど以ての外だ。 おしゃべりの一つでもしたら最後、一週間図書室の出入りを禁じられる、という噂を小耳に挟んだことがある。 「大丈夫さ。司書のお姉さんは今、職員室でコーヒーでも飲んでるぜ?」 何故そんなことを知っているのかと問いたくなるが、ここは敢えて聞かないでおこう。 「・・・・・」 言い返すのもいい加減飽きてきたので、無言で中に入る。 シンと静まり返った教室。 陳列している本たちが、まるで一斉に僕に視線を向けたみたいな錯覚を覚える。 「どうしたの、ヤマトさん?」 後ろから聞こえてきた彼の声で我に返り、辺りを見回してみる。 「奴らは一番奥の本棚の所にいるぜ?」 なんだか、緊張する。 というか、複数の生徒が、僕に何の用なのだろうか。 全く見当もつかないまま、僕の足はやがて、ラスティの言った場所に到達しようとしていた。 ゴクリ、と固唾を呑んでそこを覗き込めば。 「お、やっと御出座しか」 学校始まって以来初めて留年したことで有名な、金髪の青年ミゲル・アイマンと。 「ったく、何してたんだよラスティ」 これまた評議会議員のタッド・エルスマン氏の一人息子、ディアッカ・エルスマンが待っていたのだ。 夕暮れ時真っ只中。図書室で、小さな会合が開かれるのだった。 あとがき 拍手、第8弾です。早いもんで、あと2話で10話ですね。 これも拍手でコメントもらったので、調子に乗って書いてみました。 てかこれ読んでてあれ?と思った方。Yを読み返してみてください。はい。書き直しました。 すみません。最初はこんなつもりじゃなかったので(ぇ)。 拍手、どうもありがとうございました!! |