一体、何だというのだ。 突然三人もの男子に囲まれては、流石の僕もたじろいでしまう。 それを嘲笑うかのように、彼らはニヤニヤ口元を歪めながら僕を舐めるように見てくる。 その視線が嫌で、僕はそっと視線を外した。 「おいおい、そんなビビんなって!ほら、肩の力抜いてさ」 この空気を払拭するかのように言葉を紡いだのは、ここまで僕を連れて来たラスティだった。 しかし、そんな言葉とは裏腹に、空気は更に悪くなったような気がしたのは僕の気のせいだろうか。 「まあ、そこ座れって」 そう言って、今度はディアッカが自分たちの向かい側の席を指さした。 女一人と男三人。力の差は歴然としているので、逃げられはしないだろう。 その為、無駄な抵抗をして痛い目を見るのは絶対に嫌なので、大人しく従うことにする。 スッと椅子を引き、腰掛ける。 それを待ち構えていた彼らは、満足そうに笑みを深めた。 \ 「俺らがここに呼んだ理由、教えてやろうか?」 突然の声に、僕はほんの少し驚いてしまった。 そういえば、何故自分は今まで会話は勿論のこと、目すら合わせたことのないような男三人に、天津さえ半強制的にここに連れて こられたのだろうか。 今更になってそのことに思い至った自分の鈍さに、内心苛立ちを覚えた。 そんな僕の心情を感じ取ってか否か、ミゲルは言葉を続けた。 「アスラン・ザラ。お前の婚約者なんだろう?」 その言葉に、僕の思考は完全にフリーズしてしまった。 「・・・・・・・・・・え?」 長い沈黙の後、漸く零れたのは疑問だった。 果たして、昨日から今日にかけて、誰かにアスランと婚約したことを言っただろうか。 少なくとも、自分は誰にも言っていない。 確かに教室で、根暗で誰とも話したことのないようなアスランと話すどころか、大声で喧嘩まで繰り広げてしまったことは否めな いが、それだけで婚約に繋がるとは到底思えない。 だとすると、アスランが誰かに言ったことになるが、それもまた考えられないのだ。 「しかし、あのアスランが婚約の話を受けるとはな」 そう漏らしたのは、ディアッカだった。 それにしても、ディアッカ・エルスマンとは最近、どこか身近で聞いたことのあるような名前だ。 一体どこでだったかなどと、僕は頭の片隅でどうでもいいことを考え始める。 「一体、どんな手使ってあいつを堕としたんだ?」 そう問うたのは、ラスティであった。 笑顔なのにも拘わらず、その瞳には疑念とも憎悪ともつかない光があった。 「どんなって・・・・・別に普通にお見合いして、喋っただけ・・・ですよ」 一応ディアッカとミゲルは年上なので敬語を使い、憮然とそう言ってやると、男たちの顔色が一斉に変わった。 「喋った!?あの、アスランが?」 「嘘だろ?頭でも打ったんじゃねえか?」 「有り得るな。あいつがそう簡単に、女に気を許す筈がねえ」 口々にそう言うと、彼らは僕を蚊帳の外にしてうんうん唸りながら思案し始めた。 否、別に蚊帳の外にされて怒っているわけではないが、なんだか疎外感を感じる。 それはきっと、アスランのことだからだ。 アスランのことについて、なんだかものすごく詳しそうな彼らの会話に入れないことが、なんだかとてつもなく残念に感じるの だ。 本当に、昨日から自分はどうしてしまったのだろう。 小さく小首を傾げたりお弁当をマイペースに食べる姿に、彼を可愛いと思ってしまったり。 突然の態度の変わりように、驚いたり落胆したり。 彼の性格に苛々したり。 関係ないのに。自分には、関係のないことのはずなのに、どうしてこうも気になってしまうのだろうか。 「なあキラ・ヤマト。お前本当に、どうやってあいつを誑かしたんだ?」 言葉が先程よりも酷くなっているような気がするが、僕は気にせず言葉を紡いだ。 「別にそんな大したこと話してないし・・・ていうか、あなたたちはアスランの何なんですか?」 僕は一方的なまでの言及に耐えきれず、彼らに問うた。 話し振りからして、どうやら三人はアスランのことをよく知っているらしい。 しかしアスランには友達はいないはず。否、それはただの噂にしか過ぎないが。 だが彼らの眼を見る限り、どうにも友達という枠組みには入らないような気もする。 ゴクリ、と固唾を呑んで彼らの返答を待っていると、突然フッ・・・と場の空気が柔らかくなったような気がした。 「幼馴染みたいなもんだよ、俺らは。ここにはいねえが、あと一人いるぜ?」 なるほど、幼馴染か。 恐らく、幼い頃から彼を見てきて、年齢も上ということも相まって心情は兄貴分、というところなのだろう。 「あいつは俺らには滅茶苦茶懐っこいんだけどな。人前出るとマジ無口だぜ?」 ディアッカの言葉に付け足すように、ミゲルは面白そうに口端を釣り上げながらそう言った。 「そうそう。ま、最近じゃ滅多に会わねえからなんとも言えないが。・・・そんなアスランが、一体何でお前なんかに心を許した かが知りてえんだよ」 そう言いながら俯くラスティは、まるで恋のライバルに先を越されたような、嫉妬心のようなものをその瞳に浮かべていた。 「・・・僕だって、知らないよ。てか別に、心許したわけじゃないと思うけど?」 最早敬語だとか、気にする気さえしてこない。 彼らの幼稚なまでの嫉妬心に。 「何と言ってもあの『ザラ』だよ?そりゃ、体面も気にするでしょ。政略結婚なら尚更、成功させなきゃならない。あなたたちの 家よりそりゃ劣るけど、僕の家はこれでも業界じゃ結構な知名度なんだよ?これに失敗したら、なかなか痛いことになる。それなの に、息子にわざわざ相手に嫌われるようなことをしろって言うと思う?言うわけないでしょ。言ったらただの親馬鹿か、本当の馬鹿 だよ」 ため息交じりにそう言ってやると、案の定癪に障ったのか、彼らは眼光をきつくして睨んできた。 しかし僕はそんなことなど意にも介さず、言葉を続ける。 「でもま、アスランの行動は親の命令で動いているとは思えないよ。てか彼、天然でしょ?絶対天然だよあれ。なんかこう、ふと した瞬間、可愛いんだよ。何故か。首を傾げるときとか、なんだかまるでリス?リスって言うか、小動物だねあれは。ああそっか。 小動物か。そりゃ可愛いわけだわ。黙々とお弁当食べてる時とか。ああそっか小動物か。うん、そんな感じだ!!わ、ありがと!! なんか謎が一気に解けたような気がするよ!!」 そう自己完結して、僕はそのまま勢いに乗って席を立った。 そうして踵を返そうとすると、呆気にとられていた三人組の一人、ラスティが慌てて僕の腕を掴んできた。先ほどの痛みも引き切 っておらず、ジワリと痛みが頭に伝わってきた。 「っ待てよ!!まだ、話は終わってないぜ?」 そう言い、僕の腕を引っ張り自身の方に引き寄せる。 椅子が足に当たったが、今はそんなことを気にしていられる余裕がない。何せ、向かう先はどう考えても彼の、胸なのだから。 「っ!!??」 次の瞬間、あまりに引き寄せる力が強すぎた為、顔面を思い切り打ちつけてしまった。 だがそれも束の間、直ぐに乱暴に引き離される。 「引っ付くなよ!!」 あんたが引っ張ったからだろうが!!と思わず反論してしまいそうになったが、引っ張られた腕やらぶつかった顔面やらが痛みを 訴えてそれどころではないのでやめた。 だがしかし流石にこの怒りを無条件で静めてしまうのは遣る瀬無い、と思ったので精一杯ラスティを睨んでやる。 相手もそれが気に食わなかったのか、僕を睨み返してきた。生意気だ。 そうして眼を離した方が負け、とでも言うかのように続くと思われた睨めっこは、しかし突然の扉の開閉音により終止符を打たれ た。 「貴様ら、こんなところで何をしている?」 次いで聞こえたその声に、僕は勿論ここにいた全員が驚きの表情を浮かべた。 あとがき 拍手第9弾。メガ婚\話です。 何か月も放置していて本当に申し訳ありませんでしたorz えっと、取り敢えず三人組はアスランの幼馴染と言うことで。 入って来たのは言わずもがなあの人です。 それでは拍手、ありがとうございました!! |