そよりそよ、と微かに頬に感じる風が心地よい。

 今は丁度お昼休み。

 そして僕とアスランは、屋上で昼食をとっていた。

 「ごちそうさま」

 両手の平を合わせて言い、弁当箱を片付け始める。

 傍らのアスランは、未だに口を動かしているようだ。

 勿論、喋っているわけではない。どうにも彼は、父親の前以外だと食べるのが極端に遅くなるらしい。

 しかし、そこで苛々するほど、僕は子供ではない。

 寧ろ、面白がって見ているくらいだ。

 体育座りをして、膝を囲う両腕に顎を乗せ、ほくそ笑みながら彼を見つめる。

 その視線に、何を言うでもなく黙々と弁当を平らげて行くアスランに、僕は笑みを深くした。

 やがて箸を置いて、アスランは満足だとでも言うように溜め息を吐いた。

 「ごちそうさまでした」

 それを見計らい、僕は徐に口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Y


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねえ、アスラン?」

 小さく問うと、不思議そうに小首を傾げながらこちらに目を向けてくる彼に、僕もまた小首を傾げた。

 「アスランって、目、悪いの?」

 なんとはなしに、訪ねてみる。

 前々から、気になっていたのだ。

 視力など手術で治すことができるこのご時勢に、どうして彼は瓶底に近いほど分厚いメガネを掛けているのか。コンタクトレンズ

ならばまだ話はわかるのだが、それをしないのはただの拘りなのか、僕は気になって仕方がない。

 「へ?あ、まあ・・・。メガネ取ると、全然周りが見えなくて・・・。コンタクトにしようと思った時もあったけど、なんかこう、

面倒で・・・・・」

 照れ笑いをしながらそう言うアスランに、僕は小さく溜め息を吐いた。

 「つまり、面倒臭いからしないってわけ?」

 飽きれ口調なのにも拘らず、彼は気づいていないのか否か、微笑を浮かべて肯定した。

 「うん。まあ、コンタクトが合わないって言うのも、原因の一つなんだけどね」

 そんなアスランに、ふうん・・・と頷き、僕はじゃあさ、と言葉を続けた。

 「じゃあ、なんでそんなに前髪長くしてるのさ?」

 これも、気になっていたことだった。

 いくらなんでも、長すぎやしないかと思うのだ。

 彼の前髪は黒縁メガネ全体を隠してしまうほど、長いのだ。

 これでは視力も悪くなるはずだ。

 そう思いながらアスランの表情を伺っていると、何故だか、どこか自嘲めいた笑みで唯一見える口元を歪めた。

 「・・・理由は、ないよ。ただ・・・・・こうしていた方が楽なだけ」

 その諦めきったような表情に、僕は知らず、眉を顰めた。

 丁度その時、まるでタイミングを見計らったかのように、聞こえた予鈴。

 それに反応したアスランは、先程の表情を無理やり消して、僕に苦笑をして見せた。

 「さて、そろそろ戻ろうか」

 そうしてそのまま、僕は彼の表情の理由を聞けないまま、屋上を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その数分前。

 教室がガヤガヤと騒がしい中、屋上を見つめる男子生徒が三人。

 しかしその視線は、決して好意によるものではない。

 言うなれば、それは憎悪か、はたまた行き過ぎた至情か。

 どちらにしろ、彼らがそちらを見やる視線は、決して穏やかなものではない。

 「・・・なあ、アイツどう思う?」

 三人のうちの一人が、長々と続く沈黙に耐えかねたのか、口を開いた。

 それに答えるのは、彼の向かい側に座る男子。

 「どう見たって、つりあわねえよなあ・・・・・」

 まるでどうでもよさ気な響きだが、その実視線は三人の中で一番険しい。

 そして更に、もう一人の男子が口を開いた。

 「家柄は認めるが、あんなヤツが婚約者だなんて、認めらんねえ・・・」

 机に肘を立てて頬杖をつく男子に、二人はちらりと目をやった。

 「やるか?」

 「その方が、いいんじゃね?」

 「じゃ、決行って事で」

 そうして三人は再び、屋上に目線を戻したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき
大分間が空きましたが、拍手第6弾でございます。
アスキラ、取り敢えず一緒にお昼食べてます。取り敢えず。
なかなかキラがすんごい体勢してますが、お気になさらず(苦笑)。
あと、なんか最後の方に出てきた三人組は、私自身誰だかよくわかりません(おい)。
拍手、ありがとうございました!!!












X/ top/ Z





Photo by かぼんや