キーンコーンカーンコーン・・・・・。

 漸く、授業の終了の合図が聞こえた。

 先程届いたメールもあり、僕はアスランのところに行こうと立ち上がった。

 しかし。

 アスランは立ち上がったが、僕とは正反対のドアの方に歩いて行ってしまった。

 まさか、あのメールは嘘だったと言うことだろうか。

 そんなことを考えていると、ふと視線を感じた。

 なんだろう、と思ってそちらを見やれば、アスランは肩越しに僕を見ているではないか。

 正確には彼の瞳は前髪とメガネに隠れて見えないのだが、なんとなくその視線が僕に向けられているように感じられたのだ。

 「・・・ついて来いって、こと?」

 そう思い至るなり、僕は彼の方に向かって歩き出した。

 同時に廊下を歩みだした彼に、僕は歩調を早くする。

 一体何処に向かうのだろうか。

 周りの生徒たちが、自分たちのことを噂しているのを耳にしたが、今はアスランの後を追うことに夢中で。

 アスランを見失わないように、僕は彼の藍色を追った。

 そして、辿りついたのは。

 「・・・・・屋、上・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


X


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 壊れた鍵が、床に落ちていた。

 アスランは既にコンクリートの上に立っていて。

 階段の途中で止めていた足を再び動かし、僕は開いたままのドアから見える青い空に惹かれるように、屋上へと出た。

 「鍵、壊したの・・・・・?」

 ふと浮かんだ疑問を口に出すと、アスランはまさかと苦笑を浮かべた。

 「誰かが壊したみたいだよ。最近、気付いたんだ」

 空を背中に抱いたアスランの微苦笑は、なんだかとても寂しそうに見えて。

 「・・・ここで、お昼食べているの?」

 それでも、どうでもいいような質問ばかり浮かんでくる自分の頭に、僕は小さな怒りともどかしさを抱いた。

 「ほんの二、三週間前だよ。ここ、誰も来ないから・・・」

 言いながら、視線を外して今度は空を見上げる。

 その姿が、今にも消えてしまいそうな気がして。

 「アスラン!!」

 僕は思わず、声を上げてしまった。

 その声に驚いたように、アスランはこちらに視線を戻した。

 それを合図に、僕はこのまま謝ってしまおうと思った。

 「・・・アスラン、さっきは、ごめん。悪気は、なかったんだ・・・でも、なんていうか・・・・・」

 どうにも、いい言葉が思いつかない。

 「昨日、君から初めてのメールが届いて、嬉しくって、でも内容が、学校では話したりするのやめようとか・・・

なんか、嫌で・・・・・」

 俯いて、彼を見るのが怖くて。

 「僕は全然、困らないのに・・・気に、しないのに・・・勝手にそう決め付けたのにもムッと来たけど、でもね、

君が、君自身が、自分を卑下するの見てて、イライラしてきちゃって・・・・・ホント、ごめんね」

 そっと、彼の顔を覗き込むと、案の定彼の表情はよくわからなくて。

 けれどなんとなく。なんとなくだけど、彼が驚いているのはわかったのだ。

 そして彼は、小さな苦笑を浮かべて。

 「俺の方こそ、ごめん。キラの気持ちを考えないで、勝手なこと、言ってしまった・・・反省してるよ」

 その返答に、今まで凝っていた気持ちが、嘘のように晴れていくのを感じた。

 「アスラン・・・・・」

 嬉しいと、素直に感じられて。

 「でもやっぱり、学校ではあまり、話さない方がいいと思うんだ」

 突然苦笑と共に投下された言葉に、しばし思考を止めてしまう。

 「・・・・・・・・・・」

 言葉が出ない。しかしアスランはその沈黙を物ともせず。

 「困るとか、気にするとかじゃなくて、俺は・・・・・」

 「・・・ようするに、アスランが困るってこと?君自体が、気にするって事なの?」

 漸く出てきた声は、自分でも驚くくらい刺々しい。

 その声にドキリとしたのか、アスランは慌てて首を左右に振って否を表した。

 「だってそういうことじゃない!?僕は平気だって言ってるのにそんなこというなんて、そうとしか考えられないじゃ

ないか!!」

 一気に捲くし立てたため、息が荒くなってしまった。

 必死でそれを整えていると、アスランがでも・・・と言葉を紡ぎだした。

 「でも、何さ?」

 ムスッとそれに答えると、苦笑を浮かべたアスラン。

 「多分このままだと、君が大変な目に合うだろうから・・・」

 「大変な目?何、それ?」

 アスランの言葉を不思議に感じて、僕は首を傾げた。

 一体、どう大変なのだろうか。

 「大変な目は、大変な目。俺は、君が傷つくところを見たくない」

 苦笑を浮かべながらも垣間見えた寂しさとも悲しみとも取れるそれに、反論の余地を完全に消されたような錯覚を覚えた。

 「・・・・・・・・・・わかったよ」

 最早反論をする気にもなれず、僕は渋々妥協した。

 しかし、ここで終わりではない。

 「でも、お昼は一緒に食べようね?」

 その言葉に、あからさまに驚いた様子のアスラン。

 僕はそんなアスランに上目遣いで笑みを浮かべて。

 「ココでなら、誰も来ないんでしょ?」

 そう言ってしまえば、きっと彼は反論できない。

 そして案の定。

 「・・・了解した」

 溜め息混じりに返された言葉に、僕は笑みを深くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき
拍手ありがとうございました。
長らく放置してしまってすみません。
今年初の拍手です。
眠気と戦いながら書いたので、誤字とか多いかもしれません(おいおい)。
それでは、失礼します。












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Photo by かぼんや