まさか、僕の婚約者になろうという者が、こんな『根暗君』だったとは。 これでは僕に相手のことを伝えなかった母たちの気持ちも、理解できてしまう。 よりによって彼とは。 僕はなんて、運が悪いんだ。 U 一先ず四人は席に着き、取り合えず食事を取りながら簡単に自己紹介をした。 別に知りたくもないことだが、彼は俯きながら、ポツリポツリと言葉を漏らした。 「知っていると、思いますが・・・私は、先程父も言いましたが、アスラン・ザラといいます」 二度も言わずともわかっている。 知らずの内に集まる眉間の皺に、更に目を細めた。 「貴女と同じクラスで・・・席も、近かったと・・・・・・」 小さな声で、細切れに音を出す彼に、流石に苛立ちを隠せなくて。 「ええ、存じ上げております。貴方の事はある意味、とても有名ですから」 その返答に不思議に思ったのか、彼は小首を傾げた。 何故だろう。思わずその姿に、一瞬でも彼が可愛いと思えてしまった。 「申し遅れました。私はキラ・ヤマトと申します」 そう言って無理やり微笑むと、彼も笑顔を浮かべて。 「こちらも、存じ上げておりますよ。よろしくお願いします、キラ嬢」 その順応の早さに、思わず目を丸くしてしまう。 先程までのしどろもどろさは、一体何処へ行ってしまったのだろうか。 「え、ええ。こちらこそ、アスラン様」 たじろぎながらもなんとか言葉を搾り出すと、早いもので、もうメインディッシュが運ばれてきた。 ウェイターが長ったらしい料理の名称を述べ去っていくと、皆カチャカチャと食器を小さく鳴らしながらそれを頬張った。 「あの、失礼ですが、キラ嬢?」 「キラ、とお呼びくださいアスラン様。それでは他人行儀過ぎます」 そう苦笑を浮かべて言えば、彼もまた苦笑を浮かべて。 「ではこちらも、呼び捨てで構いません。同い年ですし、敬語も必要ありませんよ」 そう笑いながらいう彼は、なんだかものすごく好青年だ。 一体『根暗』という言葉は、本当に何処へ行ってしまったのだろうか。 疑問ばかりが頭の中を駆け巡る。 「・・・それでは不公平ですわ。貴方も是非、敬語など使わず、自然に話してください」 頭の中とは別に勝手に動く口に感謝しつつ、ニコリと微笑む。 心なしか、彼の頬が赤く染まったような気がした。 その後デザートも食べ終えた彼らは、しばらく他愛ない話に花を咲かせていたが、不意に母がそろそろ二人だけで話してみたら? と切り出した。 それは困る。 非常に困る。 二人きりになったりなどしたら、きっと沈黙が続いて居た堪れなくなる。 だが、そうこうしているうちに、彼の父親であるパトリックも賛同し、拒否権などない彼は頷くを得なかったようで、僕に困った ような表情を見せた。 と言っても、見えるのは彼の口許くらいなのだが。 僕は諦めの溜め息をこっそりと吐き、ではお庭を散歩しましょう?と大きな窓から見える大きな庭に視線を向けた。 その言葉にホッとしたように、彼は微笑を浮かべて立ち上がり、僕に手を差し伸べてくれた。 「お手を。・・・父上、少し外へ出てきます」 そうパトリックに言って、僕をエスコートする彼の姿は、文句のつけようがないほどの紳士だ。 思わず、頬に熱が集まってしまう。 握られた手が、仄かに暖かくて。 自然と緩む顔を、必至に引き締めて。 僕は彼に誘われて、外の庭園へと向かった。 あとがき 拍手、ありがとうございます。 拍手第二段です。 キラたん、いくらなんでも失礼なことを思いすぎ。 ま、思ってる分には、いいんですが。 アスランは一応大きな会社の御曹司なので、紳士に育て上げられています。 そんな彼の意外な一面に、キラ、ちょっと彼の見方を変えます。 ずっと一人称で、大変です(やりだしたのはお前だから)。 日記でいつアップできるかわからないとかいいながら、早速アップ。 早いよ自分。珍しく。 それでは、こんな小説ですが、お礼の気持ちです。 拍手、本当にありがとうございました。 |