「・・・・・・・・・・あのぅ・・・・・」 遠慮がちに目の前の男に声をかける、中立国オーブ軍の制服を着た男、アマギ。 そして、まるで母親が我が子に見てはいけませんと言うようにポンと彼の肩を叩く男、トダカ。 言わずもがな二人は軍人である。 そして二人の前に座り込んで、何やらドアの隙間から向こうを除き見ている男、ユウナ・ロマ・セイラン。 彼はこれでも政治家である。 今は先の戦争が停戦し、一応は平和を取り戻しつつある世である。 だが、だからと言ってやっていいことや悪いことの区別をつけられないほど、ユウナは幼くない。 もう、疾うに成人を超えたいい大人なのだ。 それなのに覗きとは、アマギが止めようとするのも頷ける。 しかしこうも真剣に覗きをやっているユウナに話しかけるのは、最早軍人の勇気ではなく、恥でしかないのではと踏んだトダカはアマギを 優しく止めたのだ。 「何をしているんだ、ユウナ?」 とそこに、少し低めの少女の声が聞こえて、三人は振り返った。 トダカとアマギは落ち着いた動作で、ユウナにいたっては、それはもう暗闇で幽霊か何かを見たかのように驚いた顔で。 「カガリ様・・・」 アマギは道をあける為に端に避け、トダカはアマギと同じく端に避けながら彼女の名を呟いた。 ユウナは未だに固まったままで、カガリを凝視している。 「?なんだ、私の顔に何かついてるか?」 目が明くほど見られているような気がして、カガリは怪訝そうに眉を顰めた。 「・・・・・えっ!?あ、ああ、その・・・・・別に、君の妹が、き、君の護衛と、その、キ、キ、キ、キスしてるところなんて、見てないよ!??」 冷や汗を流しながら戸にへばりつくユウナに、カガリはまたかと目を細めた。 そう、ユウナが覗きをするのは今回だけではないのだ。 もう何度あったかなんて覚えていないくらい、たくさん。 しかもターゲットは決まって、カガリの双子の妹であるキラ・ヤマトであったのだ。 しかしキラには彼氏、否、つい最近いつの間にか婚約者になっていた男がいるのだ。 その男とは、前大戦でキラと幼馴染でありながら敵同士として討ち合い、しかし戦争の終盤ではカガリも加わった三隻同盟の モビルスーツパイロットとして活躍した一人でもある、前プラント最高評議会議長パトリック・ザラの息子、アスラン・ザラである。 訳あって今はアレックス・ディノという名を名乗ってカガリの護衛という仕事に就いているが、正真正銘キラの婚約者だ。 二人は、他人など入る余地もないほどに仲が良いカップルだ。 「お前、いい加減にしろよ?くれぐれも、二人の仲を引き裂くようなことはしてくれるなよ?」 溜め息を吐きながらそう言って、語尾に「まあ、あの二人なら殺しても離れそうにないけどな」と付け足して、カガリはその場を後にした。 勿論、端に構えていた軍人二人に軽く敬礼をして。 ユウナはカガリの背中を見送りながら、悔しそうに下唇を噛んでいた。 そうしてカガリが完全に見えなくなると、再びドアの向こうに視線を戻したのだった。 ずっと一緒に... 「・・・・・ねえ、アスラン?」 徐に唇を離すと、キラは一度目を伏せて言った。 「・・・ん、何だ、キラ?」 アスランは今まで触れていたキラの柔らかい唇の余韻に浸りながら、優しく甘い声で答えた。 キラは躊躇うようにアスランをちらりと見やり、また視線を逸らす。 「どうしたんだ?言いたいことがあるなら、言って?」 相変わらずの優しい口調は、キラ限定である。 「・・・・・・・・・・・あの、あのね?・・・・・」 漸く口を開いたかと思えば、すぐにまた口ごもる。 そんなキラを見かねたのか、アスランはまたキラの唇を塞いだ。 「・・・・・ん・・・」 小さな吐息が零れ、反射的に閉じた瞼がすぐに離れたアスランの唇を名残惜しむように開かれていき、徐々に極上のアメジストが顕になっていく。 「早く言わないと、言えなくなっちゃうよ?」 少し悪戯っぽく笑いながら言うアスラン。しかしその目は真剣だ。 「・・・なんだか、さっきから、見られているような気がするんだけど・・・・・」 漸く紡いだ言葉。 しかしアスランはそれに苦笑を浮かべてキラを抱きしめた。 「そんなことないよ。考え過ぎ」 華奢なキラの身体を優しく抱きしめながら、アスランはほんの少し開いたドアを見やった。 そこから見えるのは、よく見知った人物だ。 そう、アスランは最初から気付いていた。 アスランとキラがここで愛を紡いでいる間もずっと。 否、アスランたちがこの部屋に入る前、もっと言えばここに来る前からつけられているのだ。 アスランはそれに気付きながらも何も言わなかった。 彼の目的は知っているから。だからこそ、何も言わなかったのだ。 アスランは戦場でも見せたことのない、冷たく、見る者全てを凍てつかすような目をその人物に向けた。 丁度、その人物と目が合う。 どうやら今の今までキラしか見ていなかったようである。 彼はヒッと小さく悲鳴を上げ、後退りをした。 アスランはそんな彼に小さな優越感を覚えて小さく口の端を吊り上げた。 ユウナとアスランの、ほんの小さな対決である。 「・・・それはどういうことですか、代表?」 低い声で尋ねるアスラン。 先程キラと別れてから自分の雇い主であるカガリの元に戻ったアスランは、つい今しがた聞いた言葉に我が耳を疑った。 「そのままの意味だ。お前には共に、プラントに同行してもらう」 真っ直ぐ、真剣な目をアスランに向けるカガリ。 その目を見て否と答えることも出来ず、アスランは口篭った。 五年前、月でキラと別れてからずっと生活していたプラント。 そこで母を失い、父と別たれた。 父は戦争を激化させ、終いにはナチュラル全てを滅ぼそうとした。 そして、戦死した。 アスランの目の前で。 あの場所は、プラントは、アスランにとって嫌な思い出ばかりが集う場所である。 そのことを目の前の代表、カガリはわかってくれているのだろうか。 「・・・そりゃ、あそこはお前にとって、あまり良い印象は持っていないだろうけど、私はお前に頼みたいんだ」 アスランの暗い表情に気付いてか、カガリは慌てて言葉を付け足してくる。 「私も、生き残った首長たちも、ほとんどがプラントなんて行ったことがない、未知なる場所だ。今は兎に角、強い信頼関係が必要だし、 私も無理やり連れて行きたくはない。一人で行ってもいいが、皆反対するだろう?」 机に頬杖をつきながらアスランを見つめる。 アスランは依然俯いたままで、口を開こうとしない。 「それに、できれば今回は極秘で行いたいんだ。今世界を刺激するようなことを、したくはないからな」 カガリはそう言うと、頬杖を外して机上で手を組みなおす。 「・・・・・つまり、私が適任と、そういうことですか?」 漸く口を開いたアスランからは、重い声音。 カガリはアスランが辛いと思っても、オーブの代表という立場からは溜め息を吐くことしかできなかった。 「すまんな。あとでちゃんと、キラとの時間を作ってやるよ」 一ヶ月、休みをやる。カガリはそう言葉を付け足した。 「それだけですか?」 だが、カガリの言葉に異を唱えるアスラン。カガリはまた溜め息を吐いた。 「じゃあ、半年だ。悪いが、それ以上は無理だぞ」 「わかりました。承ります」 カガリの言葉を聞くとすぐに了承の意を答えるアスラン。 現金なやつだ、とカガリは苦笑しながらよろしく頼むと言った。 「え・・・・・?」 「ごめん、キラ。君と離れるのは嫌だけど、仕事だし・・・・・」 キラは驚愕と不安を隠そうとするが、あまりに突然のことだったからか隠し切れずにアスランに伝わってしまったようだった。 「・・・そ、っか・・・そう、だよね?アスランは、カガリの護衛だもん。しっかり、守ってあげてね」 アスランを安心させようと、無理やり笑ってみせる。 しかしそれがより一層辛そうに見えて、アスランは眉根を寄せた。 「キラ・・・・・」 「大切な、姉だから・・・・・この世でたった一人の、家族だから・・・だから、ちゃんと、守ってあげて」 アスランと離れるのは嫌だけど、唯一の血の繋がった姉を自分の我儘で危険に晒すようなことはしたくなかった。 「・・・・・わかった。必ず、無事に行って、帰ってくるよ」 アスランの渋々ながらの返答に、キラは安心したように微笑んだ。 寂しさと不安とが少なからずあったが、それはアスランも同じだった。 だってもう、離れないと誓ったから。 二度と離れ離れにならないと、敵にならないと、誓ったから。 だから、安心したとまではいかないけど、大丈夫だと思えるのだ。 「気をつけてね」 「ああ」 そうして二人は、口付けを交わした。 そっと触れるだけのそれは、確かにお互いの存在を示すには十分なものだった。 夕日が海の水面に煌めき、静かな波音が聞こえる。 丘に建てられた小さな家には、子供たちの無邪気な声がこだましていた。 そんな中、機械の羽根が羽ばたく音と、『トリィ!!』という機械音声。 桜色の長い髪を結うこともなく背中に流し、それを見上げる少女。 その少女を呼ぶ、幾人もの子供たち。 「ラクス様!!」 「ラクス様、こっち!!」 「ねえ、一緒に遊ぼうよ、ラクス様!!」 どんなに声を張り上げても、それは波音にさらわれていく。 それが何だか悲しくて、けれど波音は綺麗で。 少女は自然と口を開いた。 「こんなに・・・・・」 空を飛んでいた機械の鳥が、その歌声に反応したのか舞い降りてくる。 「冷たい・・・・・」 カシャ、と小さな音をたてて少女の肩に留まるロボット鳥。 「帳の深くで・・・・・」 可愛らしく首を傾げ、また『トリィ?』と鳴く。 「あなたは一人で眠ってる・・・・・」 静かな音色はやはり、波音にさらわれていく。 とそこに、車のエンジン音が聞こえて少女は徐に振り返った。 歌声は、止まっていた。 少女はその音が誰を示すのかわかり、そっと微笑んだ。 「帰ってまいりましたわね」 笑みを含んだ声音は、静かに消えていった。 「お帰りなさい、キラ・・・それにアスランも」 丁寧な言葉遣いで車から降りたキラとアスランを迎え入れる少女、ラクス。 「ラクス・・・ただいま」 一瞬驚きに目を見開きながらも、すぐに満面の笑みを浮かべるキラ。 「ああ。ラクス・・・」 アスランも答えるが、すぐに真剣な目をラクスに向けた。 「・・・アスラン?」 怪訝そうにアスランを見つめ直し、ラクスは首を傾げた。 「ラクス。折り入って、お話があるのですが・・・」 その声音の暗さに、ラクスはただ事ではないと悟り、はいと返事をする。 「では中でお聞きしましょう」 そう言ってふわりと微笑むと、ラクスは家の方へと歩き出した。 アスランはそれに倣い歩き出すが、キラが中々動こうとしないので肩越しに振り返った。 「・・・キラ?」 キラは俯いたまま動こうとはせず、両側に垂らした拳に更に力を入れた。 アスランはそんなキラの様子を心配して、キラの傍に歩み寄って彼女の肩に手を乗せた。 「どうした?どこか、具合でも悪いのか?」 キラの顔を覗き込み、彼女の表情を探ろうとするが、キラの思いの他長い前髪が邪魔して定かではない。 やがてキラは手を解き、徐に顔を上げて薄らと微笑んだ。 「・・・・・ううん・・・大丈夫」 それはどこか、痛々しさを含んでいた。 カチャリ、と音をたててカップがソーサーに戻されるのを、アスランはぼんやりとしながら知らずのうちに睨んでいた。 「・・・・・そうですか。でも、少しの間なのでしょう?」 手をカップに沿わせたままやんわりと問うラクスに、アスランはええ、と返す。 「長居はしません。何せ、極秘ですから・・・」 キラは家に入るなり、疲れたからと言って部屋に戻ってしまった。 本当は別の理由があるのだろうことは明白だが、二人とも敢えて口にはしなかった。 よって今はアスランとラクス、二人きりだ。 以前は親の決めた婚約者同士ではあったが、今は破棄して友人という形になっている。 元より二人に恋愛感情はないが、いつだったかラクスが追悼慰霊団代表としてユニウスセブンの視察に行った時、彼女はAAに拾われた。 その時にラクスが、『アスランはいずれ私と結婚する方ですわ』とキラに言ったらしいのだ。 キラは二人が婚約解消になったと聞くまで気に病み、いつの間にか拒食症になっていたと聞く。勿論、別の理由もあるだろうが。 しかしキラはそれを知っても尚、アスランとラクスに一線を引いているようだった。 今はそうでもないが、ラクスの予想では、キラは二人が思いあっているのではないかと思っていると考えている。 因みにアスランはそんなことなど疾うの昔に忘れている。というか考えないようにしているといった方が正しいが。 前大戦で負った傷は何も、キラだけを苛んでいるわけではない。 アスランだって、大きな傷を負ったのだ。 それは幼馴染で愛する人を討たなければならなかったことや、何人もの戦友の死。 母親を亡くした悲しみと、それに伴うナチュラルへの憎しみ。 こんな思いはもう二度としたくないと心に誓い、軍に入った。 今思えば、全てはそこから始まっていたのだ。 父親はプラントの国防委員長という職に就き、アスランはそんな父親の言う事を聞いていればいいのだと信じていた。 だが、それがいけなかったのかもしれない。 いつの間にか、否、母親が死んだその時から、父親は変わっていってしまったのだ。 血のバレンタインの悲劇をもう二度と繰り返さない為ではなく、自分の妻を奪った憎きナチュラルを滅ぼすこと。 それが父親の考えだと気付いた時には、既にもう手遅れだった。 全てが示し合わせたように悪い方向へと向かっていく中、立ち上がった三隻同盟。 やっと一緒にいられるようになったキラ。 束の間の幸せ。 しかしそれは父親の行いで消え去っていった。 ジェネシスの中で銃に撃たれて息を引き取る直前まで、父親はアスランなど見ることなどなく、ただナチュラルを滅ぼすことだけを考えていたのだ。 ただ、考えが違うだけ。 そんな単純なことなら、どんなに楽だったろうか。 月にいた頃、これでもかというほどにしつこくアスランと彼の母親にプラントに戻るように言ってきた父親。 それだけ大切に思われていた、あの頃。 確かな愛情があったのだと、今更気付いてももう遅い。 気付くのは全て、終わった後なのだ。 何もかも、終わった後に気付いて、そして必ず後悔する。 『人間』とは、愚かなものだ。 それでも自分たちは生きている。今も。 息をして、地に足をついている。 戦争が終わった今も、生きている。 ならば生きなければ。 たくさんの犠牲をはらった全大戦。 生きなければ多くの人に申し訳がたたない。 「・・・・・ラクス」 不意に顔を上げ、アスランは小さく、けれどきちんと聞こえる程度の声量で声を紡いだ。 「はい?」 ラクスも小さく微笑みながら顔を上げ、カップに添えていた手を膝の上に乗せた。 「キラのことを、頼みます」 ふと消えた笑顔。代わりに痛いほど真剣な空の色。 「わかっていますわ」 ラクスの真摯な返事に、アスランは安堵の吐息を漏らす。 「そう言ってもらえると、嬉しいです。・・・くれぐれもあの、ユウナ・ロマには気をつけてくださいね」 アスランがまた真剣な目をして言うと、ラクスは再び微笑を浮かべながら言った。 「大丈夫です。抜かりはありませんわ」 表情は誰もが見惚れるほどなのに、その声音は身が凍るほど冷たかった。誤って風邪をひいてしまいそうだ。 「そ、うですか。なら、よかった・・・」 アスランは少したじろぎながらもなんとか返事を返さなければと声を紡ぎ出した。 「では、俺はそろそろ」 そう言って立ち上がると、アスランは小さく一礼してその場を後にしようとする。 「ええ、お気をつけて。キラは私にお任せくださいな」 背中に彼女の声を受けながら、アスランはキラの部屋に向かった。 「キラ?入るよ?」 軽くノックをしても返事がないので、アスランはそう声をかけてドアノブに手を掛けた。 「キラ?」 部屋の中は既に日が暮れたというのにも関わらず、依然として真っ暗なままだ。 ふとベッドを見やると、そこには人型の膨らみがあった。 アスランはそれに近付きながら、小さく声をかけた。 「キラ、寝てるのか?」 そっと布団を捲り、キラの顔を覗き見ようとするが、彼女はうつ伏せている為表情はわからない。 しかし寝息が聞こえないことから、眠ってはいないだろうことは予想できた。 「・・・怒ってるのか?勝手に決めたこと」 溜め息を吐きながらベッドに腰を下ろす。 キラは未だ、顔を上げない。 「・・・・・キラ」 アスランの、どこか有無を言わせない響きを持つ声音に、キラは漸く少し、顔を上げた。 「・・・なんでもないよ。アスランは、気にしすぎ」 そう言って、今度は顔をそっぽに向けてしまう。 アスランはそんなキラにまた溜め息を吐いた。 どうしてキラはいつも、自分の中で解決しようとするのだろう。 我儘を言ってもいいのに。 頼ってくれてもいいのに。 いつも自分で解決しようとする。 昔はうんざりするほど頼ってくれたのに、今はその逆で。 アスランは寂しささえ感じていた。 そんなアスランの思いに気付いたか否か、キラはまた口を開いた。 「ラクスや、マリューさん、バルトフェルドさんもいるから、大丈夫」 口ではそういいつつも、本当はアスランと離れたくないと、アスラン自身もわかっている。 けれど、それでも自分の気持ちを言葉にしないのはやはり、キラの唯一無二の家族の安全を図ってのことだろう。 「・・・・・キラ」 アスランは先程の呆れた表情を消し、真剣なエメラルドをキラの華奢な手に向けた。 そしてそれを手に取り、細い薬指にキスを送った。 ピクリ、とキラの身体が震えたが、アスランはそれさえ気にせずに今度はキラの耳元に唇を寄せた。 そしてボソリと、本当に小さな声で囁いた。 瞬間、キラの目が見開かれた。 それさえも楽しむかのように、アスランは優しい輝きを放つそのエメラルドを細めた。 驚きで顔をアスランの方へ向けたキラの口は、衝撃に開閉を繰り返している。 そして自らの薬指に違和感を感じて徐に目をやると、更にその目は見開かれた。 「っアスラン、これ!?」 そこにはいつの間に嵌めたのだろう、キラの指にぴったりと馴染むように嵌められた指輪があった。 それは、細いリングの真ん中に、まるでアスランの瞳をそのまま嵌め込んだような、小さいながらも見事な輝きを放つエメラルドが嵌め 込まれたものだった。 キラはまたアスランに視線を戻して、彼の揺ぎ無い優しい微笑みに、視界が滲んでいくのを感じた。 「っ僕、待ってるから!・・・だから、絶対、僕の元へ、帰ってきて!!」 頬を零れ落ちる涙も厭わず、左手をそっと包み込みながら、望みをアスランにぶつける。 「もちろん。俺の居場所は、キラのところだけだから・・・」 そう言ってふわりと、優しくキラを包み込む。 キラはアスランの胸に顔を埋め、自分の不安をぶつけるように、けれどアスランが、カガリが、無事に帰って来れるように、ただ只管祈った。 そんなキラが、愛おしくて。 アスランはキラが苦しくない程度に、ほんの少しだけ腕の力を強めた。 あとがき キリ番10000を踏んでくださったあいか様に捧げます。 かなり遅れて申し訳ありませんでした。 リクでは『アスキラ←?』で、アスキラがラブラブバカップルで(違)『?』が馬に蹴られる、ということでしたが。 『?』の中には何故かユウナ。あいか様、ユウナ好きでしたらごめんなさい(今更)。 最後の方、アスランが囁いた言葉はご想像にお任せします(笑)。 あ、一応これ運命の前の話です。 気に入っていただけたら幸いです。 このようなものでよろしければ貰ってやってください。 by.奏織沙音 修正しました。 感想等、お待ちしております。 |
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